ドイツにおけるその基本法の改正経過・内容について!

齋藤康輝先生

講話日:平成27年11月18日(水)

齋藤康輝先生

高崎経済大学地域政策学部教授

講演要旨

 ドイツの現在の憲法、「ボン基本法」は、1949年に制定され、60回改正されている。第1条には、「人間の尊厳」が掲げられている。基本的な権利、連邦制については、改正不可能であることが明記されている。その他の特徴としては、代表民主制を取り、非民主的な政党は解散させられる(過去2例あり)。ワイマール憲法以来の特徴として、社会国家を掲げている点などが挙げられるが、最大の特徴は、憲法裁判所制度である。国民が憲法違反ではないかと思った事項について提起することができる憲法異議制度があり、年間千件以上提起される。実際に審理が行われるのは、憲法裁判所が重要と認めたものに限られる。とはいえ、ドイツ人はこの制度について、「生活の中で憲法が生きている」と誇りに思っている。アジア・アフリカの20数カ国に加え、隣国フランスすら、この制度を模倣した憲法改正が行われたほどである。
 改正手続は、「憲法を改正する法律」に基づいて行われ、連邦議会と参議院の両院の3分の2以上の賛成で成立し、国民投票は行わない。第1回改正は制定2年後の51年、内乱罪の削除が行われた。その後、第7回(56年)に再軍備と徴兵制復活、第17回(68年)に国家非常事態制度、第36回(90年)の東西統一などの重要な改正もあるが、多くは技術的な部分の改正である。また、解釈改憲も度々行われている。しかし、先ほども述べたように、基本権と連邦制は改正できないという歯止めはきいている。
 そもそも、なぜ基本法という名称だったのかというと、当時の議会はドイツが再統一されるまでは、暫定的に基本法という名称にする、としたからである。その後、1990年に統一は実現したが、当時壊滅状態にあった東ドイツ経済の立て直しが先決という面もあり、2年間にわたる憲法協議会では、憲法という名称にすることについては、結論が出ないまま現在にいたっている。とはいえ、ドイツ国民には、憲法とは何かということについて国民全体で考えようとする憲法愛国心がある。日本も見習うべき点だと考える。

<< ページ上部へ <<