外国人の住民投票権は、憲法解釈上認められるか?

高乗正臣先生

講話日:平成26年11月26日(水)

高乗正臣先生

平成国際大学副学長・同大学院教授、憲法学会理事長

講演要旨

 「条例」とは地方公共団体の定める法であるが、近年、自治体の重要問題に関して恒常的に住民投票を行える条例が増加しており、この問題点について論じていきたい。条例による住民投票は、地方自治法や公職選挙法が適用されないため、議題や投票資格者の範囲を自由に定めることが可能である。たとえば投票資格者に永住外国人を加えたり(2010年現在で、川崎市、広島市など24自治体)、未成年者に投票を与えたり(長野県平谷村では15歳以上の者に付与)する自治体がある。
 問題点は次のとおり。
1、一方的な主張で署名を集め、住民投票が決定した後は、その主張に基づく投票運動が行われるため、多くの住民は反対意見を公平に知る機会がほとんどない。このため正常な判断ができない状態での投票となってしまう可能性がある。
2、議会を経て決定された事項に対して、住民投票がNOを突きつけることが可能であるが、これは議会制民主主義を否定する制度となりかねない。
3、外国人に投票権を認める条例が制定されている自治体では、実質的に外国人に我が国の地方政治に重大な影響を与える権限を認めることになる。そればかりではない。たとえば原発や米軍基地の設置などの問題は、国家の基本的なあり方を左右する重要テーマである。こうしたテーマに外国人の意思を反映させることは国民主権原理に反する。
4、多くの自治体が制定している「自治基本条例」の条文中に、「最高規範」「市民主権」「自主的に法令の解釈及び運用を行う」等の文言があるが、これらは憲法を最高法規とする我が国の法体系の尊重と矛盾する危険がある。

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