自民党の第9条改憲案の法制度上の課題!
講話日:令和5年3月15日(金) 清原淳平会長
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講演要旨
自民党の改憲案は、第9条の1項2項はそのままにして、自衛隊の存在を明記するというもの。そんなことをすれば、法制度理論を無視している上に、自衛隊の活動は今まで以上に制約されることになる。なぜか? それは、上位法・下位法の原則に反するからである。法体系は、上位の法に反する下位の法は作れない。国内法では、憲法→法律→政令→条例の順序となる。そして、憲法内部の条項内においてもこの原則は適用される。原則的条項が第1条から並び、解釈・補足・例外規定は後ろの条文に置かれる。そして、項の中でも原則は1項に掲げられ、2項で補足、3項で例外、と並ぶ。
これを現行憲法第9条に当てはめるとどうなるか。第9条の主要な内容は、「武力行使の永久放棄」「陸海空軍の不保持」「(独立国には認められる)交戦権の否認」の3つであるが、この3つの原則をそのままに、実質上軍事力を持っていることを明記すると、大陸法学の原則からして矛盾していると言わざるを得ない。したがって、当団体で勉強している元自衛隊幹部はもちろん、法律の分かる現役自衛隊幹部たちは、この自民党の現行第9条をそのままにして自衛隊を追記する案について、深刻に憂えている。こうして、第9条問題について、学者や治家も、認識・考え方が異なるのは、憲法という学問を学ぶ根底に混乱があるからだ。
そこで、私の改正案では、
新設の1 独立主権国家として、陸海空軍の保持と行使
新設の2 内閣総理大臣の陸海空軍指揮権
新設の3 内乱など治安出動する場合の要件
新設の4 国際連合からの要請に応ずる義務
新設の5 他国からの攻撃・侵略があった場合の対処
以上5つの新設条項を現在の第9条に代わり新設することを提唱している。