・第27条「児童酷使の禁止」の問題点・第14条「栄典の授与」の問題点
・現憲法に欠落の「緊急事態」新設を!

清原淳平会長

講話日:令和2年11月20日(金)

清原淳平会長

講演要旨

第27条3項「児童酷使の禁止」の問題点 
 先月の研究会にて、問題提起のあった第27条3項の「児童は、これを酷使してはならない」について。確かに、今の時代には合わない規定である。なぜGHQがこのような規定を置いたのかというと、マッカーサー元帥がアメリカ大使館からGHQ本部に通う道中、路上で子供が靴磨きや物売りをしているのが目に留まり、「日本は子供を働かせる風習があるのか」と考えて、このような規定を置いたと考えられる。現在では考えられないので、廃止すべきだ。大野先生からはもうひとつ、児童酷使の禁止に代わって児童虐待の禁止を入れるべきだとの御意見があった。現憲法の中には、第11条「基本的人権の享有」、第12条「自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止」があり、その中の「国民に保障する」の「国民」には、子供や赤子も含むと解されている。子供や赤子にも基本的人権は保障されている。また、「児童虐待防止法」や「児童福祉法」などの法律も充実している。

第14条「栄典の授与」の問題点 
 1項の問題点:まず、「法の下に平等」とあるが、GHQ案を直訳してしまったため、すでに制定されている法律についてのみ平等という意味に解される。悪法であっても従わなければならないということだ。GHQは、憲法より自分たちの命令が上だ、という意味でこのような案をつくったのだろうが、独立した以上、西欧諸国のように、本来は「法の前に平等」とするのが正しい。
 2項の問題点:明治憲法下では、5つの爵位があり、貴族院議員の選挙権と被選挙権がある。また、一身専属ではなく、男系家督相続人に相続することもできる。だが、この制度が廃止されてすでに70年以上、復活する見込みもないので、2項は削除すべきだ。
 3項の問題点:2項の貴族制度のように、世襲制であれば、民主主義体制では許されないが、今は国家のために貢献した人物には叙勲の制度がある。「いかなる特典も伴わない」のであれば、これも許されないことになってしまうが、それではあまりに冷たすぎる。改めるべきである。だが、議員年金は特権に当たるのではという議論もあるが。

現憲法に欠落の「緊急事態」新設を!
 なぜ、日本国憲法に緊急事態規定がないのか、と考えるには、まずなぜ憲法が出来たかに遡って考える必要がある。日本とは異なり、中世ヨーロッパには、専制君主が君臨し、命令1つで命を奪うなど、住民を虐げていた。近世に入り、思想家の「天賦人権思想」に力を得て、立法・行政・司法に住民が参加することなどを君主と契約するという意味で憲法が生まれた。西欧の経験則から、君主が人民の基本的人権を侵害するには、憲法に明確に規定を置く必要があるというのが原則である。基本的人権が侵害されるケースとして一般的なのが国家非常事態である。国家非常事態の態様は、「戦争、自然大災害、人為的大災害、疫病」などに大別される。その態様も憲法上には明記されている。そして、国家非常事態に当たって誰が指揮権者なのかも明確になっている。しかし、日本国憲法は、制定当時の占領下に作られたまま一度も改正されていないので、非独立主権国家の体裁のままである。憲法を改正し、国家緊急事態対処規定と指揮権者を明確にすべきだ。  


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