分かりやすい憲法改正学へのすすめ その11
  ──「内閣規定の問題点と改正案」──

清原淳平会長

講話日:平成27年12月25日(金)

清原淳平会長

講演要旨

 まず、国会の規定で触れたが、一院制を採用したため、「内閣総理大臣の指名における衆議院の優越」は削除されている。次に、現行第66条2項には、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」とあるが、「文民」という言葉は何を意味しているのか、一般の国民にはわかりにくいので、当団体案の第64条3項では、「現に国防軍に属する者であってはならない」としている。また、内閣総理大臣の地位は、明治憲法下では「同輩中の主席」で、一大臣が内閣の決定に従わないためにしばしば内閣が倒れた。現行憲法には、「首長」とあるが、当団体案では、より明確に「国務大臣を統率する」としている。次に、当団体案第67条に[内閣総理大臣の臨時職務代行者]、を新設した。大平総理や小渕総理が現職中に逝去した時、誰が臨時代行者なのかが問題となった。アメリカでは、副大統領から下院議長あたりまで、細かく規定されていることもあり、「臨時に内閣総理大臣の職務を行う国務大臣を指定しなければならない」と規定している。次に、当団体案第68条では、国会議員同様、「日本国の発展と理福の増進のため、日本国の憲法及び法律を尊重擁護し、全力をあげて職務に専念することを誓う」という宣誓を義務付けている。
 次に、当団体案第70条では[内閣不信任の議決]について、提出後48時間を経過後でなければ行うことができない、と規定している。内閣不信任案提出の権限の乱用を防ぐためでもあり、世界の多くの国がこの規定を採用しているため、これにならったものである。 そして、現行第73条「内閣の職務」の6号に、「この憲法及び法律の規定を実施するために政令を制定する」とあるが、憲法の規定を直接実施する政令が制定されるのは上位法・下位法の原則からしておかしいので、削除している。
 そして、当団体案第78条には、「国家緊急事態」を置いている。国家の独立と安全保障、又は国民の生活、身体もしくは財産に切迫した影響を及ぼす緊急事態が発生した場合において、内閣総理大臣は、国家緊急事態を宣言し、必要に応じて緊急命令を発することができる。但し、事前に、時宜においては事後に、国会の承認を得なければならない、としている。独立国には当然置かれている規定だが、日本国憲法にはないのが、植民地的性格を有するものの一つと言えよう。

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