分かりやすい憲法改正学へのすすめ
──その1、憲法をはじめとする法体系の仕組み──
講話日:平成26年10月22日(水) 清原淳平会長
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講演要旨
法律学を学ぶ前提としてまず「法学原論」がある。そこで以下列記のような基本原則を学ぶ。(1)上位法・下位法の原則。――下位の法は上位の法を侵してはならないという原則。憲法はその国の最高位であり、その下に法律⇒政令⇒条例などがあり、それぞれ上位の規定を侵さない範囲でつくる原則である。(2)事後法の禁止――行為の時に処罰規定がないのに、遡って処罰することを禁ずるとの原則。(3)拡張解釈(法文の本来の意味・内容より広く解釈すること)や類推解釈(法文が似かよっている箇所をよりどころに、憶測・想像・推測して解釈すること)の禁止。(4)法は公布(可決した憲法や法律等を、官報によって広く国民にしらせること)を経て、施行(公布された憲法や法律等は決められた執行日から効力を発生させる)するとの決まり。また、制定とは、憲法や法律を作って定めることをいうが、全面改正を指す説と部分改正をも含む説とがある。以上が一般に「法学原論」に書かれているとして、それぞれについて例証を引いて説明があった。例えば、上位法・下位法の原則については、かつて社会党が、憲法には反するが法律で合法であるとの「違憲合法論」を唱えたので、当団体は、上記原則に反するとして抗議したことがある。
また、清原会長は、その他に憲法を学ぶ上で必要な事項として、(5)大陸法系と英米法系がある。ドイツをはじめヨーロッパ大陸諸国では、議会が定めた法文を厳格に解釈して適用するのが大陸法系で、イギリスは長い王制と国民との関係から慣習法が支配しており、明文の憲法はなく、むしろ裁判所の判例が重視される。アメリカは明文の憲法も持つが英米法系に属する。(6)日本は、戦前は大陸法系だったが、占領され米英の支配を受けて、判例重視の英米法系も取り入れ、折衷的である。(7)憲法学説が、自国憲法優位か国際条約優位かに分かれている点の認識も大切である。