混迷する我が国の議院内閣制をいかに正すか
──イギリスの議院内閣制に学ぶもの──
講話日:平成24年11月29日(木) 浅野和生先生 平成国際大学法学部教授・同大学院教授 |
講演要旨
イギリスでは、首相の任命は、国王の専権事項である。しかし実際には、総選挙で勝利した政党の党首が慣例的に選ばれる。したがって、日本のように、国会で総理を選ぶ選挙は行われない。
イギリスでは、人口6千万人余であるのに、議員は1400人もおり、日本の700人余に比べて多い。日本で首相公選制を主張する議員もいるが、イギリスでは、それは王位の権威に抵触すると考えている人が多い。日本でも同様、首相公選制はふさわしくないと考える。また、日本では、毎年のように総理大臣が変わることが問題となっているが、イギリスでは一般に首相の在任期間か長い。なぜか。それは、政党の組織が一体化していることによる。と言うのは、選挙区に候補者の空きができると、インターネットで公募し、そこに応募してきた候補者の中から、党がその候補者の資質を厳選して、立候補させる方式を採っているので、党の政策に反する候補者が立つことはない。したがって、その候補者は、その選挙区の地元民でないことさえ多い。こうした方式のため、政策で党が割れることもないので、その党首の地位も安定しており、対立党に総選挙で負けないかぎり、党首が首相を務め続けられるからである。また、労働党からも貴族院に多数選出されているとのお話もあり、イギリスの議院内閣制には、驚くべきことも多く、また、参考になる面が多々あって、大層勉強になりました。その後の質疑応答も盛んでした。