憲法改正の論点
――財政関係条項を中心として――
講話日:平成28年2月26日(金) 夜久仁(やくひとし)先生 帝京大学地域経済学科 教授 |
講演要旨
わが国では、明治憲法制定以前からの太政官の通達や勅令という形を承継し、予算と法律とは別個の方式であるとする「予算理論」を採用し、それが現行憲法に受け継がれている。諸外国の「予算理論」には、予算行政説(政府作成の財政計画を国会が承認する)と、予算法規説(国会による財政計画の制定)との二説がある。現行憲法ではそのどちらかについて明言はないが、明治憲法時代からの伝統により予算行政説に拠っているとみられる。
しかし、国民主権主義や、現行憲法第41条の「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」の規程を重視すれば、「予算法規説」とすべきである。この点、憲法改正にあたって、どちらの説を採るのか、明記すべきである。
また、国債について、明治憲法にはその発行について明文の条文があったが、現行憲法に規定がなく、財政法で国債は予算とは別に法律で定めることになっている。しかし、国の歳入の3分の1以上を国債に依存している現状から、憲法改正に際しては、現行憲法に国債条項を明記すべきである。