「当面する集団的自衛権の各種論点を解説する」

高乗正臣先生

講話日:平成26年6月24日(火)

高乗正臣先生

平成国際大学副学長・同大学院教授、憲法学会理事長

講演要旨

 尖閣列島への中国の圧力もあり、集団的自衛権が行使できるかどうかをめぐり、論議が沸騰している。安倍総理が諮問された有識者懇談会は、集団的自衛権について解釈を変更して限定的に容認する方向で、近く答申を出す模様である。ただ、集団的自衛権を解釈変更して認めるとなると、かなり学会も政界も紛糾することは免れないだろう。けだし、日本も国連に加盟しているので、国連憲章第51条により、国際法上、集団的自衛権は国家固有の権利として認められる。しかし、日本国憲法第9条が、戦争放棄、戦力の不保持、武力行使の放棄、交戦権の否認、と明記しているので、内閣法制局も、「集団的自衛権は、あっても、行使できない。」としてきたし、これまでの歴代内閣も、憲法第9条は、自衛権を否定するものではないが、自衛のためであっても「戦力の保持」は認められないとして来た。一部学者の中には、第9条2項の冒頭にある「前項の目的を達するため」といういわゆる芦田修正?を根拠に「自衛のための戦力は保持できる」とする考えもあるが、歴代政府は、そこまで拡大解釈していない。つまり、歴代政府は、自衛力とは、戦力ではなく、「自衛のための必要最小限度の実力であり、自衛隊はその範囲内であるから、第9条2項が禁止する陸海空軍その他の戦力には当たらない」としてきた。そして、自衛隊の海外派遣についても、上記の見地から、厳しい制約を課してきた。そうしたこれまでの第9条の法文解釈と政府見解からすると、集団的自衛権を解釈で認め、限定的とはいえ武力の行使を認めるとなると、かなり論議が紛糾すると思う。私としては、学者の良心からすれば、正々堂々、第9条の改正を国民に提示するのが正道と思う。

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