最近の憲法学界における論議の傾向

高乗正臣先生

講話日:平成24年10月30日(火)

高乗正臣先生

平成国際大学副学長兼同大学大学院法学研究科教授、
憲法学会理事長

講演要旨

 宮澤俊義教授の「八月革命説」は、天皇主権から国民主権へと帝国憲法の根本が変更されたのだからこれは革命であるとする主張だが、ポツダム宣言受諾により、主権は国民に移ったのではなくGHQに渡ったと考えれば欠陥ある説である。次に佐々木惣一教授の有効論は、帝国憲法73条の定める手続によって成立したものであるから有効だとするが、同じく占領下で成立した憲法であることを考えると、手続きが正しいからといって有効とはいえない面もある。無効論の立場では井上孚麿教授、相原良一教授らの説がある。現行憲法の成立過程の全般にわたって占領軍により、民法で言うところの「強迫」が存在したことやハーグ陸戦法規に違反していることから無効だと唱える。しかし、これに対しても国民が自発的意思によってこれを受け入れていたとも考えられる状況では、民法の法理からして、有効と扱われかねないという疑問が残る。以上、これらの説には、欠陥がある。当団体の専任講師であった竹花光範教授の、占領軍が我が国を占領統治するための基本法、すなわち「占領管理法」だとする説には説得力がある。占領終了時に一般の占領管理法は廃止の手続きがとられたが、日本国憲法のみ廃止の手続きがとられずに、その後は最高法規としての効力を持ち続けたということだ。この立場からすれば、現行憲法第96条の規定に基づいて「補修的改正」を行うのが筋だ、と論ぜられた。その後の質疑応答も盛んであった。

高乗正臣先生贈呈

副学長就任を祝い記念品贈呈。
  当団体の主任講師をしていただいている高乗先生は、ご承知のように、幾つかの大学を経て、平成国際大学法学部教授を務め、また憲法学会理事長であるが、この7月、平成国際大学副学長に就任された。そこで、この日、会員一同を代表して、清原淳平会長より、御祝いの印として、記念品を贈呈申し上げた。

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