一般社団法人 e世論協会に招かれて


『なぜ、憲法改正か?!』

e世論協会に招かれて

清原淳平会長

日時:平成26年10月31日(金) 午後1時半~
会場:理窓会館(東京都新宿区神楽坂2-6-1 PORTA神楽坂7F)
主催:一般社団法人 e世論協会

講演要旨

●長年にわたって、憲法を修・改正しないことの弊害
 日本国憲法は、昭和22年の5月3日に制定されて、67年間改正していません。ところが世界各国を見ると、例えばドイツは57回、アメリカは6回、スイスは59回改正している。ソ連は10数年前につぶれましたが、それまでに56回改正しています(いずれも昭和22年以降)。共産国でさえしている。なぜ改正するのかというと、社会が変化するからです。憲法は成立した時点で静止しているのに、社会は日進月歩どころか分進秒歩の勢いで変わっている。67年前につくられた憲法と現実とにギャップが生じるのは当たり前。いろんな問題が起こる。ドイツ人は法論理が得意ですから、制定時の国民が後世の国民を縛ってはいけないという認識があるんですよ。だから変えるんだと。法的にはそういう理由を持っております。そういうことで、各国ともどんどん改正しているわけです。日本の場合も、変わっていく現実にある程度合わせなければならない、という問題があるわけですね。いまは日本国憲法の条文は変えずに、解釈で補うということをしている。そうするとどんな現象が起きるかっていうと、民間の方も、法律を自由に解釈していいんだと思ってしまうんですね。例えば私のところに裁判官の方が来られたことがあって、その人たちが言うんです。「例えば国税から指摘されて訴訟になったときに、被告が言うんですよ、『自分の会社は正しいと思ってやったんだ。脱税じゃない。国だって解釈で補ってるじゃないか、国民が解釈して何が悪いんだ』と主張したりするので、困るんですよ」と。だから遵法精神が乱れてきているというのが現実ですね。国民の側から言いたい放題やりたい放題するのが権利だっていうような認識が出てきますから、その辺が社会の乱れにつながるということをご理解いただきたい。
●形式上の欠陥
現憲法に28ヵ所もある法律用語の誤りがあります。これはうちに昔熱心に参加しておられた三浦光保さんという方が一生懸命研究してまとめたものです。例えば最初の二条とか八条ですね、「議決」とあるわけですね。「国会が議決した法律案」というのがあるんですが、「議決」には、「可決」と「否決」があるんですよ、ですからこれは「国会が可決した法律案」とならないといけない。同様に五十七条、五十八条には「多数決で議決したときは」と書いてありますが、これも「多数決による可決」としなければおかしい。否決した場合も効果があるなんてことはないわけですからね。それから予算なんかも六十条にありますけど、普通は可決されるまでは予算案なんです。それは大日本帝国憲法もそう書いてある。「予算案は」と来るわけで「予算は」とは言わないわけです。それから9条の「戦争の放棄」っていう言葉なんですが、これは「戦争の否認」と言わなきゃいけないのを「戦争の放棄」としてある。なぜおかしいのかというと、みなさん身近で出てくるのは相続の放棄っていう言葉だろうと思うんです。相続の放棄ということは前提として相続権という正当な権利があるということです。正当にある相続権を「私はいりませんよ」っていうのが放棄なんです。ですからこの辺でも用語の違いがある。このような法律用語の誤りが、全部で28ヵ所もあると言う指摘なんです。アメリカから案文が提起されて、GHQから要請があったものを慌てて翻訳したものですからね、作った方にもそういう厳格な認識がなかったと思いますけど、翻訳の時にもそういう認識がない。その結果28ヵ所も誤りがある憲法を持っているということなんですね。
●独立国としての欠陥
3年半前に東日本大震災があった時に対処が遅れたということがあるんです。これは憲法に「大災害が起こった時は、まず政府が、元首クラスの方が非常事態宣言を発する」といった規定がないためなんですね。それから大災害が起こった時に、まず救済するということでお金が要りますね。お金をすぐ出さなきゃいけない。そのために緊急財政処分という手段がありますがそれもない。大日本帝国憲法にはこの点がはっきり書いてあったわけですね。だから大正12年9月1日の関東大震災が起きたその日のうちに政府は時の首相が非常事態宣言を発してます。そして翌日9月2日には予備費から緊急に支出するということで財政処分をしております。なぜ、日本国憲法にそういう規定がないのか。それは独立国の憲法ではないからなんですね。20世紀になってくると植民地にも憲法を与えようという動きが起りました。例えばフィリピンはアメリカの植民地だったわけですが、憲法を持たせているんです。そして、やはり緊急事態宣言とかはない。どういうことかというと、そういうことは植民地の主である宗主国がすべてやるんだと。だから、植民地の民衆がそんなことやる必要ないという考えなんですね。それから戦争の放棄っていう条項も置いてます。露骨にフィリピンの住民はアメリカの大統領の指揮下にあるということも入ってます。それに近い形で今の日本国憲法は作られているということを、これはぜひご承知いただきたいと思います。日本は、昭和27年に独立したけれども、憲法の内容は植民地と同じだ。だからこれを真に独立国の憲法にする。まずそこから改正しなきゃいけないんじゃないかというのが私たちの考えです。
●有名無実な規定
八十九条の(公金の私教育への使用禁止)の問題があるんです。この八十九条を教育に絞って読んでみると、「公金その他の公の財産は、・・公の支配に属しない・・教育・・に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」という風に読める。ということは「公の支配に属しない」というのは、私立学校ですね。つまり私立学校に公のお金を出しちゃいけないと書いてあるわけ。それで、政府は私立学校に助成金を出さなくなった。そうすると私立学校は困っちゃった。何とかしてくれと訴えた、みんな潰れるんじゃないかと心配した。何とかしないと日本の教育がおかしくなるということで、時の政府はやむなく2年ぐらいしてから私学振興財団というのを文部省の傘下につくって、ポンと大きなお金を出して、そこから私立の大学なり小中学校に助成金を分配するという仕組みを考えた。ワンクッション置いたわけです。憲法に反するけど、解釈で補ったっていうより便法を考えてあえてしょうがないから私学振興財団を作ってお金を出したということになるんです。アメリカがなぜこんな規定を置いたのかというと、それは欧州もそうですけど、昔から教育というのはキリスト教会がやっていたわけですね。ということから、公立で、政府がお金を出して学校をつくるという慣習がなかった。ですから、占領軍も日本に対して欧米と同じようにやれということだったと思います。日本は便法を講じて私学振興財団を作った。その結果が非常にまずい結果を呼んでしまったんですね。じゃあ自分の省庁もやろうじゃないかということになって、各省庁がその方式をまねて、それが省庁の傘下に財団法人、いま独立行政法人なんて言ってますけど、そういう名称でお金を出している。そういう弊害があるということで、八十九条も改正せねばなるまいということで、国会なんかでも問題になっております。
●九条の問題点
九条には、「(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と書いてある。「交戦権」ってのは、国際法上は、外国との対立で、自分の国がやられたら一種の正当防衛の論理で武力を行使してやり返すということなんですが、これも認めないということですね。これは先ほど申しました通り、独立国の体裁ではないということ、そのものなんですね。昭和27年に独立したのですから、少なくとも自分の国は自分で守らなくちゃいけないので、そのためには外交努力だけじゃなくて、向こうから攻めてきた場合は、戦わざるを得ない。そういう意味で直さなきゃいけないということです。 それから湾岸戦争が平成元年に始まって、フセインのイラクがクウェートに侵攻して、占領してしまう。それに対して連合国は、多国籍軍を結成して、イラクの侵攻を排除しようとして戦争になるわけですね。その時に日本も自衛隊出してくれということになった。しかし国会で揉めて自衛隊は出せないという結論になる。ならばお金を出しましょうと、最初に40億ドル出して、それから翌年に90億ドル出したと、これは当時のレートで1兆7千億円ですよ、これだけのお金を多国籍軍に提供した。日本としては大きな貢献だと思ったけれども、クウェートが独立を回復したときに、クウェートにおいて式典が行われた。多国籍軍に参加した国々の旗がずらっと並んだんですが、日章旗だけはなかった。あの時に日本国民は気がついたと思うんです。お金をいくら出しても評価してもらえないんだと。それでPKOとかPKFとか外国から要請受けて、まあ後方支援という形で参加しようと形で参加するようになったわけです。
●いよいよ憲法改正へ
 再来年には参議院の通常選挙があるので、そこで与党が、改憲勢力が3分の2占めれば改憲派実現する、という段階に来ています。国会で発議されると、これから国民投票になるわけですが、国民投票で過半数取らないと法文として決議されないと言うことが九十六条にあるもんですから、これから国民の理解を得て国会で発議され、国民投票にかかった場合は過半数を得たいというのが与党の考えだということをご承知置きいただきたいと思います。細かいことは本に書いておきましたので、お読みいただければ幸いです(拍手)。

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